日本では2020年2月ごろより猛威を振るい始めた新型コロナウィルス(COVID-19)に。2022年2月時点でも、いまだに新型コロナウィルスの影響が続いています。
新型コロナウィルス感染症の流行は経済にも大きな打撃を与えました。「コロナ禍」と呼ばれ、さまざまな業界に影響がおよんでいます。自動車業界では、新型コロナウィルス感染症の流行によってどのような影響があったのでしょうか?
そこでこの記事では、コロナ禍の自動車業界への影響を紹介します。
目次
コロナ禍の期間の自動車の販売台数
日本でコロナ禍が始まった2020年の国内新車販売台数は、どうだったのでしょうか?
小型乗用車と普通乗用車を合わせた登録車は、247万8832台。前年比-12.2%です。また軽自動車の販売台数は133万1149台で、前年比-10.0%でした。輸入車の場合は25万4404台で、前年比-14.7%。
登録車、軽乗用車、輸入車のすべてが前年割れになっているのです。やはりコロナ禍は、自動車業界に大きな影響を与えているとわかります。
コロナ禍の自動車業界のおもな影響
コロナ禍により、自動車業界では具体的にどんな影響が起きているのでしょうか。おもなものを挙げると、 以下のとおりです。
- 工場の稼働停止・生産能力低下
- 半導体不足など、部品調達の困難
- 原材料費や輸送費の高騰
- 新車の買い控えと中古車の需要増
ひとつずつ詳しく紹介していきます。
工場の稼働停止・生産能力低下
コロナ禍の自動車業界への影響のひとつめは、自動車関連工場の稼働停止や生産能力の低下です。
新型コロナウィルスの流行により、日本では緊急事態宣言やまん延防止措置がたびたび発令されました。これにより自動車製造工場や自動車部品工場など、自動車関連の企業で働く従業員も出勤を控えることになります。工場など現場作業ではテレワークという働き方はできません。そのため多くの工場が稼働を停止せざるおえなくなりました。
また従業員が新型コロナウィルスの陽性判定が出た場合はもちろん、濃厚接触者になった場合には一定期間出勤ができません。その影響で工場が稼働していても、通常より生産能力が低下してしまうこともあります。
さらに新型コロナウィルスの影響は国内だけではありません。海外にも自動車や自動車部品の生産工場も多いです。海外ではロックダウンなどの、非常に強力な対応をしている国もありました。そのため海外の関連工場の稼働停止や生産力低下が、国内の自動車産業にも大きな影響を与えています。
半導体不足など、部品調達の困難
コロナ禍が自動車業界へ与える影響のふたつめは、部品調達が困難になっていることです。
さきほどコロナ禍により自動車工場の稼働が停止したり、生産能力が低下したりしたと説明しました。自動車部品工場も同様の状況ですので、自動車部品工場で生産される自動車部品も生産数が減少しています。そのため、さまざまな自動部品が不足し、調達困難な状況に陥っているのです。
半導体不足
調達困難な部品の代表が、半導体です。半導体は「産業のコメ」と呼ばれる重要なもの。半導体と聞けば、パソコンや家電などの電子機器に使っているイメージがあるかもしれません。しかし現代では、電子機器以外のさまざまなものに半導体が使用されています。そして自動車にも半導体は、欠かせない部品なのです。世界規模で半導体不足になっており、深刻な問題になっています。
自動車では電動ミラーやパワーウインドウ、エンジン、ブレーキ、インパネなど、電子制御されているものが多数あります。それらの部分には、半導体が必須部品です。また車にはカーステレオやカーナビゲーションが搭載されていることが当たり前になっています。それらも電子機器ですから、半導体は必要です。そのため世界的な半導体不足は、自動車業界に深刻な影響を与えています。
さらに2020年10月に、宮崎県延岡市の旭化成エレクトロニクスの半導体製造工場で、大規模火災が発生。また2021年3月には、茨城県ひたちなか市にある、ルネサス エレクトロニクスの那珂工場でも大規模火災が発生しました。国内最大規模の半導体生産工場での相次いだ火災は、半導体不足に追い打ちをかけることになったのです。
ナイロン不足
半導体のほかに、ナイロン不足も自動車業界に影響を与えています。
アメリカのテキサス州は、世界的に大きな規模のナイロン生産拠点です。テキサスではコロナ禍による工場の稼働停止や生産力低下に加え、2021年2月に大規模な寒波が襲来し、石油化学プラントに大きな影響を与えました。
寒波の影響で大規模停電が発生し、配管が凍結するなど設備が損傷し、長期間にわたって稼働停止しました。この影響でナイロン生産が不足し、自動車製造に大きな影響を与えたのです。 ナイロンは樹脂系部品に必須の原材料。エアバッグやシートベルトなどをはじめ、自動車ではさまざまな樹脂製の部品が使われています。長期にわたるナイロン不足は、自動車製造において死活問題になりました。
原材料費や輸送費の高騰
先述のように、供給不足により部品の調達困難になりました。たとえ入手できようになったとしても原材料価格が高騰し、自動車製造に大きな影響をおよぼしています。
さらに価格が高騰しているのは、原材料費だけではありません。物流の機能低下により、輸送費も高騰しているのです。
コロナ禍の影響で物流に関わる作業の人員が不足し、物流の機能低下をおよぼしました。加えて、コロナ禍による自宅待機やテレワークの増加により、いわゆる「巣ごもり需要」が増加。そのため物流の需要が高まり、作業人員の負担が増加しました。これらの影響で輸送費が高騰したのです。さらにガソリン価格が上昇したこともあり、物流にかかるコストが増加しています。
加えて人員不足と需要の増加により、物流の遅延が発生するようになりました。この影響で、自動車工場で生産予定の遅れや生産台数の低下なども発生しています。
新車の買い控えと中古車の需要増
ここまで自動車の生産面での影響を説明してきました。コロナ禍は、自動車の販売面でも影響を与えています。
コロナ禍によって、消費者が新車を買い控えする傾向があるのです。感染拡大に伴って外出を自粛するようになった結果、新車購入の必要性が減少したためと考えられます。また先述したように自動車の生産能力が低下しています。そのため購入しても納車が大幅に遅れる可能性があり、入荷が未定となる可能性もあります。ですからコロナ禍の影響が収まるまでは、新車の購入を控える人も出ているのです。
いっぽうで、中古車は人気が上昇しています。普段、公共交通機関を使って移動していた人が、感染予防のために不特定多数が乗車する公共交通機関の利用を控えるようになりました。しかしどうしても移動が必要な場合に、感染予防マイカーを利用して移動するようになったと考えられています。また新車の場合だと納車が遅延したり、納車日が未定だったりするため、新車の代わりに納車が早い中古車を買い求める傾向があるのです。
そのため日常の足として利用しやすい軽自動車やコンパクトカーの中古車を中心に、中古車価格が高騰したり、車種によっては中古車の在庫が減少したりしています。
まとめ
コロナ禍で多大な影響を受けている日本経済ですが、自動車業界も大きな影響を受けました。苦しい状況の中、各社はさまざまな対応策を打ち出していくでしょう。まだまだ新型コロナウィルスの流行は収まりませんが、自動車業界の再浮上に期待したいと思います。