日本では「ミニバン」は、人気のジャンルです。各メーカーから、さまざまなミニバンが発売されています。その中でも注目なのが「コンパクトミニバン」というもの。
名前のとおり小型のミニバンで、コンパクトカーより少しだけ大きな5ナンバーサイズのボディーに、3列目シートを備え、さらにスライドドアまで搭載しているのです。ミニバンなのに小回りが利いて取り回しがよく、それでいて多人数乗車やゆとりのある室内空間を両立させているのが魅力といえるでしょう。
そんなコンパクトミニバンを代表する車種がトヨタの「シエンタ」とホンダの「フリード」の2種。コンパクトミニバンの双璧であり、ライバル車種なのです。しかもシエンタは2022年8月にフルモデルチェンジを実施。ライバルのフリードも来年にはフルモデルチェンジするのではないかと噂されています。
しかしコンパクトミニバンの購入するとき、ライバルである新型シエンタとフリード、どちらがいいのか迷ってしまいそうです。そこでこの記事では、新型シエンタとフリードの特徴を比較し、まとめていきます。ぜひ購入する際の参考にしてください。
※福祉車両は比較対象外としています
目次
新型シエンタとフリードの特徴を紹介!
まずは新型シエンタとフリードはどんな車なのか、それぞれ簡単にみていきます。
新型シエンタとは?
シエンタは、トヨタが2003年に販売を開始した車種です。その後、2015年にフルモデルチェンジが実施され、2代目のモデルが登場。さらに2022年8月に2度目のフルモデルチェンジを実施し、3代目モデルとなりました。
新型シエンタの外観は2代目モデルと比べるとやや丸みを帯びたデザインで、かわいらしさと躍動感を兼ね備えた個性的な印象です。
ちなみに車名の「シエンタ」は、スペイン語で「7」を意味する「シエテ(siete)」と、英語で「楽しませる」を意味する「エンターテイン(entertain)」を組み合わせたもの。
フリードとは?
フリードは、ホンダが2008年から販売をしている車種です。モビリオの後継車種として登場しました。2016年にフルモデルチェンジを実施し、2代目モデルとなっています。
スタイリッシュな印象のデザインの外観が印象的で、室内のインパネ部分に木目調のパネルを使うなどおしゃれなイメージです。
車名のフリードは、「自由」を意味する英語「フリーダム(Freedom)」に、「自由に行動する」という意味の「フリー・ドゥー(Free Do)」を組み合わせています。
グレード展開・価格で比較
新型シエンタ | フリード | |
価格帯 | 約195万〜310万円 | 約244万円〜308万円 |
モデル | ハイブリッド/ガソリン | ハイブリッド/ガソリン |
駆動方式 | ハイブリッド:2WD or 4WD ガソリン:FF | ハイブリッド:2WD or 4WD ガソリン:2WD or 4WD |
乗車定員 | 7名 or 5名 | 7名 or 6名 or 5名 |
排気量 | 1,500cc | 1,500cc |
新型シエンタにはガソリン車とハイブリッド車が設定されており、ハイブリッド車には2WD(FF)と4WD(E-Four)があります。ガソリン車は2WDのみです。なおFFは7人乗りですが、4WDは6人乗りになります。
また、派生グレードとして5人乗りの2列シートモデルもラインナップしており、人気です。
フリードには、ガソリン車とハイブリッド車が設定されています。一部のグレードを除き、2WD(FF)と4WDがあり、6人乗りのものと7人乗りのものがラインナップしています。
また派生グレードとしてSUV風デザインの「CROSSTAR(クロスター)」、専用カスタマイズパーツを施した「Modulo X(モデューロ・エックス)」、乗車定員5人の2列シート車「フリード+(プラス)」なども人気です。
ボディーサイズを比較
新型シエンタ | フリード | |
全長 | 4,260mm | 4,265mm 4.295mm(5人乗り2WD) 4.265mm(5人乗り4WD) |
全幅 | 1,695mm | 1,695mm |
全高 | 1,675mm(2WD) 1,695mm(4WD) | 1,710mm(2WD) 1,735mm(4WD) |
ホイールベース | 2,750mm | 2.740mm |
最低地上高 | 140mm | 135mm(2WD) 150mm(4WD) |
最小回転半径 | 5.0m | 5.2m |
新型シエンタとフリードのボディーサイズは、ほぼ互角です。両車のボディーサイズの中で、一番違いがあるのが全高。
新型シエンタよりフリードの方が、2WDでは35mm、4WDは40mm高いです。とはいえ、どちらもコンパクトなサイズであるのは変わりませんので、気にするほどの差ではありません。
室内空間を比較
新型シエンタ | フリード | |
室内長 | 2,545mm(7人乗り) 2,030mm(5人乗り) | 3,045mm(6〜7人乗り) 2,310mm(5人乗り) |
室内幅 | 1,530mm | 1,455mm |
室内高 | 1,300mm | 1,275mm(6〜7人乗り ハイブリッド) 1,285mm(6〜7人乗り ガソリン) 1,275mm(5人乗り ハイブリッド) 1,285mm(5人乗り ガソリン) |
続いて、室内空間を比較します。
室内長に関しては、圧倒的にフリードが広いです。しかし室内幅・室内高は新型シエンタのほうがわずかにゆとりがあります。ただし両車とも、コンパクトな車のわりには十分広い室内空間です。
また両車とも後席の両側にパワースライドドアを搭載しており、乗り降りは便利。
なお新型シエンタもフリードも乗車定員やハイブリッド/ガソリンなどの仕様の違いにより、室内空間も若干違っているので注意して下さい。
3列目シートを比較
新型シエンタとフリードの3列目シートを比較します。両車ともコンパクトでありながら3列目シートを備えているのを特徴としています。でも実は、3列目シートの扱いが両車で一番違う点なのです(5人乗りモデルは除きます)。
新型シエンタは3列目シートを格納するとき、「ダイブイン」方式です。2列目シートを前に倒したあと、3列目シートをたたんで2列目シートの下の窪みに入れ込みます。その後、2列目シートを元に戻します。3列目シートが2列目シートの下に格納されるので、とても広い荷室空間が出現するのです。
逆にいえば新型シエンタで3列目を格納・展開するときは、必ず2列目シートを倒す動作が必要になります。作業の手数が多い上、2列目に人や物があればどかす必要があるのです。チャイルドシートを固定している場合は、かなり面倒でしょう。
いっぽうフリードは、3列目シートの格納は「サイド跳ね上げ」方式。3列目シートをたたんだあと、持ち上げて室内横側上部に吊します。
荷室空間は狭くなる印象ですがフリードは低床なので、積載容量は十分あります。しかし、どうしても横から見た空間の形が「台形」のようになるので、積載するものによってはデッドスペースが生まれるかもしれません。また運転席からの後部の視界を妨げることはありませんが、慣れるまでは目障りに感じる可能性があります。
新型シエンタとフリードの3列目シートの特徴をまとめると、 以下のとおりです。
新型シエンタ | フリード | |
メリット | ●格納時に2列目シート下に隠れるので、荷室空間が広くなる ●格納・展開時にあまり力を必要とせず、楽に作業できる | ●格納・展開時に2列目シートを倒す必要がなく、操作の手順がシンプル ●3列目シートに厚みがあり、クッション性があって座り心地がよい |
デメリット | ●格納・展開時、2列目シートをいったん倒して戻す必要があり、操作の手数が多く複雑 ●3列目シートが薄めで、座り心地が劣る | ●格納時、シートを吊り下げるときに少し力が必要 ●格納時の荷室空間の形が台形状になり、積載する荷物によってはデッドスペースが生まれる可能性がある |
ちなみに新型シエンタ、フリードとも3列目シートだけでなく2列目シートもたためば、さらに広い荷室空間を利用できます。
便利機能を比較
多人数乗車する場合、旅行などのお出かけが多いのではないでしょうか。そんなとき、室内をいかに快適に過ごせるかは重要です。
新型シエンタには、天井サーキュレーターが付いています(一部のグレードを除くメーカーオプション)。車内の空気を後席に送り、2列目はもちろん、3列目でも快適です。フリードには天井サーキュレーターは付いていません。運転席・助手席の下に送風口がありますが、3列目には風が届きにくいです。天井サーキュレーターは、新型シエンタを選ぶメリットのひとつといえます。
フリードにはルームミラーとは別に「室内確認用ミラー」が付いています。後ろを振り向かなくとも2列目・3列目のようすを確認できるのがメリット。ちょっとした機能ですが、小さな子供のいる家族には、大変助かります。
さらにフリードの6人乗りは、2列目がキャプテンシートになっています。助手席と同じような独立したシートです。そのためゆとりがあり、乗り心地も抜群。さらに1列目・2列目から3列目まで車外に出ずに移動できる「ウォークスルー」は、雨の日などに活躍します。
なお7人乗りフリードや新型シエンタには、3列目へのウォークスルー機能はありません(1列目・2列目間はウォークスルー可能)。また新型シエンタにはキャプテンシート搭載モデルもありません。
走行性能・燃費を比較
新型シエンタのパワートレインは、ハイブリッド車が1.5L 直3DOHC+THS II、ガソリン車は1.5L 直3DOHC+CVTを搭載しています。
いっぽうフリードのパワートレインは、ハイブリッド車に1.5L i-VTECエンジンと高出力モーターを内蔵した7速デュアルクラッチトランスミッションのSPORT HYBRID i-DCD。ガソリン車が1.5L直4DOHC+CVTを搭載しています。
続いて燃費(WLTCモード)を比較してみましょう。
新型シエンタ | フリード | |
ハイブリッド (2WD) | 28.2〜28.8km/L | 20.9km/L |
ハイブリッド (4WD) | 25.3km/L | 19.8km/L |
ガソリン(2WD) | 18.3〜18.4km/L | 17.0km/L |
ガソリン (4WD) | (設定なし) | 15.6km/L |
新型シエンタはフルモデルチェンジしたばかりで最新鋭なのもありますが、圧倒的に新型シエンタの方が高燃費です。
安全性能を比較
近年の新車には安全システムが充実しており、購入時に確認すべきポイントになっています。
新型シエンタには「TOYOTA Safety Sense(トヨタ・セーフティー・センス)」、フリードには「HONDA Sensing(ホンダ・センシング)」と呼ばれる予防安全システムが備わっています。
シエンタ | フリード | |
衝突被害軽減ブレーキ | ○ | ○ |
歩行者事故低減 | ○ | ○ |
誤発進抑制制御機能 | ○ | ○ |
クルーズコントロール | ○ | ○ (アダプティブ・クルーズコントロール) |
車線維持支援 | ○ | ○ |
路外逸脱抑制機能 | 警告のみ | ○ |
先行車発進告知 | ○ | ○ |
標識認識機能 | ○ | ○ |
オートライト | ○ | ○ |
フルモデルチェンジ前のシエンタは、予防安全システムの面でややフリードに見劣りしていました。しかし新型シエンタではフリードとほぼ互角の充実ぶりになっています。
まとめ
同じコンパクトミニバンで、ライバルである新型シエンタとフリード。比較したときポイントとなるのは3列目シートの扱い方です。ご自身のライフスタイルに合う車を選んでみるのがおすすめです。実際に試乗してみるのが、一番わかりやすいでしょう。
また2022年9月現在、新型シエンタはフルモデルチェンジ直後ということで、最新鋭の装備を搭載しているため、フリードより魅力的な部分も多い印象があります。いっぽうフリードでは2023年にもフルモデルチェンジをするのではないかとう噂もあります。
時間がある方は、フリードのフルモデルチェンジを待って比べてみるのも手かもしれません。